急に視野の一部が見えなくなったり、物がぼやけて見えるようになったことはありませんか?
これらの症状は網膜静脈閉塞症という眼疾患の可能性があります。
網膜静脈閉塞症は糖尿病や高血圧などの生活習慣病と密接な関係があり、早期診断と適切な治療が予後を大きく左右します。
生活習慣病がある方は眼の症状が無くとも定期的に眼科で検査を受けられると良いでしょう。
| 網膜静脈閉塞症の原因 |
網膜静脈閉塞症は、網膜内の静脈が詰まることで血流が阻害され、網膜に出血や浮腫が生じる疾患です。網膜は眼底にある薄い膜状の組織で、カメラのフィルムのような役割を果たしており、ここに障害が生じると視機能に重大な影響を及ぼします。
網膜静脈閉塞症は閉塞部位によって「網膜中心静脈閉塞症(CRVO)」と「網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)」の2つに大別されます。網膜中心静脈閉塞症は網膜全体に影響を及ぼし、より重篤な視力障害を来すことが多い一方、網膜静脈分枝閉塞症は網膜の一部分に限局した病変となります。
網膜静脈閉塞症の最も重要な特徴は、生活習慣病との強い関連性です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病があると網膜静脈閉塞症を発症しやすいため、これらの疾患をお持ちの方は特に注意が必要です。
高血圧は血管壁に持続的な圧力をかけることで動脈硬化を促進し、網膜内の細動脈も動脈硬化します。糖尿病では血管内皮の機能異常や血液粘度の上昇により、血栓形成のリスクが高まります。これらの要因が複合的に作用することで、網膜動静脈の交叉部で静脈に血栓が形成されやすくなるのです。
網膜静脈閉塞症の症状は、閉塞部位や重症度によって大きく異なりますが、多くの患者さんが突然の視力低下や視野欠損を訴えて来院されます。
急性期の症状として最も多いのが、突然の視力低下です。
「朝起きたら片目が見えにくくなっていた」「テレビを見ていたら急に画面の一部が見えなくなった」といった変化を経験される方が多く見られます。
視野欠損も重要な症状の一つです。
網膜分枝静脈閉塞症では、閉塞した血管の支配領域に対応した部分的な視野欠損が生じます。患者さんは「新聞の一部分だけが読めない」「人の顔の半分が見えない」といった症状を訴えることがあります。
変視症という、物が歪んで見える症状も現れることがあります。
これは黄斑部に浮腫が生じることで起こる症状で、直線が波打って見えたり、文字が歪んで読みにくくなったりします。
網膜静脈閉塞症は通常、痛みを伴わないため、症状に気づかずに放置してしまうケースもあります。しかし、早期治療が視力予後を大きく改善するため、上記のような症状を感じた場合は速やかな受診が重要です。
網膜静脈閉塞症では、循環障害を起こした網膜組織からVEGF(血管内皮増殖因子)という物質が過剰に分泌されます。このVEGFが黄斑部の腫れ(黄斑浮腫)や異常血管(網膜新生血管)の形成を引き起こし、視力低下の原因となります。
治療にあたってはVEGFの働きを制御することで黄斑浮腫による視力悪化を食い止め、合併症の発生を予防することが中心となります。
VEGFの作用を阻害する薬剤を眼球内に直接投与する治療法です。
この治療により黄斑部の腫れを軽減し、視力の改善や悪化の抑制が期待できます。黄斑浮腫を伴う網膜静脈閉塞症では、最初に選択される治療法となります。
黄斑浮腫は改善する事が多いのですが、病気自体が治癒するわけではありませんので、再び浮腫が起きた場合は再度注射を行い、症状をコントロールします。
眼の注射と聞くと不安に思われる方がいらっしゃいますが、この治療は日帰りで実施可能で、麻酔を使用しますので痛みはほとんど感じません。
血管が閉塞し、血流が悪くなった領域にレーザー光線を照射することで、VEGFの過剰な産生を抑制する治療法です。
レーザーを照射された網膜組織からのVEGF分泌が減少します。これにより網膜新生血管の形成が抑制され、新生血管の破綻による硝子体出血を予防します。
眼内に大量の出血(硝子体出血)が起こった際は、溜まった血液を直接取り除く硝子体手術を実施します。また、薬物治療の効果が十分でない場合、黄斑浮腫の改善を促進する目的で手術を検討することもあります。当院は硝子体手術を専門とする院長が日帰りで行っています。
網膜静脈閉塞症の治療と並行して、基礎疾患の管理も極めて重要です。
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のコントロールは、症状のコントロールと反対側の眼の発症予防において不可欠です。内科での治療も並行して行いましょう。